組織開発コンサルティングレポートVol.002「テレワーク導入によって社員が感じている価値と副作用とは何か?」
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業種
企業経営
- 種別 レポート
テレワーク導入によって社員が感じている価値と副作用とは何か? 解説
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役 / 江畑 直樹
内閣府の調査データによりますと、全国のテレワークの実施率は34.6%で、このうち継続希望は8割を超えているようです。テレワーク経験者は、新たな働き方を通して何かしらの価値を見出しているようですが、それはどのようなことでしょうか?
今回のレポートでは、テレワーク導入によって経験者が感じているテレワークの価値とは何か、またテレワークに導入よって今後生じうるマイナス面とは何かについて、それぞれ2つに絞ってお伝えします。
テレワーク導入によって、経験者が感じている価値
まず、テレワーク導入によって、経験者が感じている価値について説明します。これは一言でいえば、これまで社内勤務で感じるストレスから解放されたことが挙げられるのではないかと考えています。2つに分けて説明したいと思います。
1.会社にいること、人と触れ合うことの煩わしさの減少
私たちは、普段さほど問題視しませんが、社内で仕事を進めていると、同じ空間にたくさんの人がいて、いろいろな話が飛び交っているので、周囲が気になったり、気が散ってしまったりと、落ち着いて業務に集中することができなくなることがあります。
また、会社には様々な異なる個性を持つ方が集まっていますが、自分と関係する人とはうまく付き合っていくことが求められるため、気疲れや面倒くささ、周りからどのように見られているのだろうかという不安も抱きやすくなります。
1人になる時間を確保しづらい職場は、特に敏感な方にとって、大きなストレスになっていました。
これらストレスは、これまでは「仕方ないもの」「変えられないもの」として受け止められていましたが、テレワークが始まったことで、自分だけの空間で仕事ができるようになり、これまで蓄積されていた無自覚なストレスに気づき、解放された感覚になっているのではないかと考えています。
2.業務の効率化によるストレスの軽減
新型コロナの感染防止から、現在は出社ばかりか、顧客訪問もNGとするケースが増えており、WEBでの対応・打ち合わせで業務やサービス提供を行う傾向が強まっています。首都圏の通勤にかかる平均時間が約1時間20分となっていますので、満員電車のストレスと、移動時間の有効活用は、大きなストレス軽減になっているのは間違いないことでしょう。
また、WEBに切り替えるタイミングで、会議の時間が短縮されていることも社員のストレス軽減につながっていることと考えています。例えば、事前にアジェンダを共有したり、資料を事前準備してアップロードしておくなどです。
WEB会議は、効率を重視して進行する傾向が強まるために、会議や打ち合わせの時間が減少し、仕事に投下する時間が増えていることもプラスに働いていることと思います。
このように、新型コロナによるテレワーク拡大により、社員のストレスが軽減されていることがお分かりかと思います。しかし、ここには副作用という落とし穴もあり、マネジメントをする際には注意が必要です。
テレワークが主流になることによる副作用
テレワークが主流になることによる副作用とは何でしょうか?
いくつかの観点で説明できますが、今回は、「周りのことが気にならなくなってしまうこと」、「仕事の感度が鈍くなること」の2つをご紹介します。
1.周りのことが気にならなくなってしまうこと
テレワークになりますと、自分の周りに他者がいないことになりますので、上司・先輩は部下の顔色や、仕事の進め方などが見れなくなってしまいます。また、個人にタスクを割り振り、期限内に業務を進めてもらう流れとなるため、個人責任のウェイトが大きくなります。すると、おのずと仲間のことや全体のことが気にならなくなってしまいます。
社内であれば、上司が部下をみて気になった時に「大丈夫か」と声をかけて話を聴いてあげたり、部下も身近な先輩に分からないことや迷っていることを相談したりすることが気軽にできていたため、お互いを支えあう関係になり、チームワークのようなものを感じやすい状況にありました。
それが、テレワークになると、自分で考え、行動するという流れが中心となるため、仕事ができる人や個人で業務が完結できる人にとってはよいのでしょうが、そうではない人からすれば、迷いと不安が生じやすくなります。このようなストレスは放置しておくと、孤独感となり、会社に属する中での居場所を感じることが難しくなってくるでしょう。
2.仕事の感度が鈍くなること
皆さんも経験がある方多いかと思いますが、アイディアは、何気ない雑談の中から生まれることが多かったりします。これがテレワークになると雑談する相手がいなくなり、個人で過ごす時間が中心となってしまうので、創造性が低くなってしまいます。
また、顧客に訪問するような業種の場合は、顧客と直に触れて、五感を通して顧客の問題意識やニーズを探るといったことも大切なことです。しかし、テレワークになると、データや情報による、思考に基づく業務遂行が中心となってしまいます。すると、顧客や市場を肌で感じて、何が起きているのか、何が本質的に問われているのかを、洞察していくことが難しくなってきます。情報やデータはある側面から見たものにすぎませんので、そこに偏った見方をしてしまうと、本質からずれた企画提案や業務提供をすることになってしまうでしょう。
人との交流や場に触れることでわかるもの、気づくものは少なからずあるものですが、テレワークによる効率重視は、その価値を見失いやすくしてしまいます。
これからの新しい時代のマネジメントを考えていくにあたっては、上記2点をしっかりと踏まえ、仲間を気にかけて思いやること、効率と交流のバランスを考えること、感性を意識的に使うこと・磨くことなど、本質を見失わないよう様々な角度から捉えること、などを取り入れていくことが重要になると考えています。
このレポートの解説者
江畑 直樹(えばた なおき)
株式会社日本経営 副部長 株式会社ミライバ 取締役
2003年日本経営入社。主に医療機関、福祉施設の組織創りや幹部・管理職・監督職の研修に従事する。約2年間にわたる医療・福祉のグループ法人への出向を含め、これまでに100以上の医療法人、社会福祉法人の支援実績を有する。
2018年に株式会社ミライバを設立し、組織の風土改革や次世代リーダーの育成、幹部・管理職の視座の向上等をテーマとする組織開発コンサルティングや人材開発研修の支援を行う。
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